
事業承継でM&Aを選ぶべきか?メリットとデメリットを経営者目線で整理
自社の将来を考えたとき、事業承継やM&Aをどう進めるべきか悩んでいる経営者の方は少なくありません。
後継者問題への不安や、従業員や取引先への責任感、さらに自分自身の引退後の生活設計など、検討すべきポイントは多岐にわたります。
一方で、事業承継M&Aには明確なメリットと見過ごせないデメリットがあり、それらを正しく理解せずに進めると、思わぬリスクを抱える可能性もあります。
この記事では、事業承継とM&Aの基礎知識から、経営者の立場で押さえておきたいメリット・デメリット、さらに実務上の進め方までを整理して解説します。
これから会社の売却や承継を検討される方が、納得感のある判断を行うための参考にしてください。

事業承継とM&Aの基礎知識を経営者向けに解説
事業承継は、現経営者が築いてきた経営資源を次の担い手に引き継ぎ、企業価値と雇用を将来にわたって守ることを目的としています。
中小企業庁の整理では、承継方法は「親族内承継」「従業員承継」「第三者承継(M&A)」の大きく3つに分類されています。
親族内承継は、相続や贈与も通じて所有と経営を一体で引き継ぎやすい一方、親族間調整や相続対策が課題になりやすい方法です。
従業員承継は、会社の文化を理解した人材に経営を任せやすい反面、株式取得資金の確保など資金面のハードルがある点を押さえる必要があります。
第三者承継としてのM&Aは、社外の企業や個人に株式や事業を譲渡し、対価を得ながら経営を引き継ぐ方法です。
代表的なスキームとして、会社の支配権そのものを移転する「株式譲渡」と、特定の事業や不動産、従業員、取引関係など必要な資産・負債のみを移転する「事業譲渡」があります。
中小企業庁の解説でも、第三者承継においては、株式譲渡と事業譲渡を中心に、会社分割などを組み合わせながら最適な形を検討することが重要とされています。
どのスキームを選ぶかによって、譲渡後の経営関与の仕方や税務・契約の整理範囲が大きく変わるため、早い段階から方向性をイメージしておくことが大切です。
中小企業基盤整備機構や日本政策金融公庫の調査では、経営者の高齢化が進み、60代以降で事業承継を意識し始めるケースが多い一方、実際の準備が後ろ倒しになりやすい実態が示されています。
特に、後継者候補がいない、将来の投資負担に不安がある、個人保証や担保の整理を早めに検討したいと感じた段階は、事業承継M&Aを選択肢に入れる典型的なタイミングといえます。
また、中小企業白書などでも、経営者の年齢が高まるほど廃業選択の割合が増える傾向が示されており、企業価値を残す観点からは、少なくとも50代のうちから承継方針を検討し始めることが推奨されています。
このように、年齢や事業環境の変化を踏まえて「いつ動き出すか」を意識することが、納得のいく承継につながります。

| 承継方法 | 主な引継ぎ先 | 特徴 |
|---|---|---|
| 親族内承継 | 子などの親族 | 所有と経営の一体承継 |
| 従業員承継 | 役員・幹部社員 | 企業文化の継続期待 |
| 第三者承継M&A | 社外企業・個人 | 対価獲得と成長期待 |
事業承継M&Aの主なメリットを経営者の視点で整理
事業承継M&Aは、後継者不在に悩む経営者にとって、事業を存続させる有力な手段です。
中小企業庁の資料でも、社外への引継ぎとしてのM&Aは、雇用や取引関係を維持しつつ事業を承継できる方法として位置付けられています。
取引先や金融機関からの信頼、蓄積されたノウハウやブランドを引き継げる点も大きな利点です。
このように、事業面でのメリットは会社の存続と発展を見据えた選択肢として重視されています。
さらに、M&Aによる第三者承継では、株式や事業の譲渡対価として創業者利益を得られる点が特徴です。
中小企業庁や中小企業基盤整備機構の情報でも、経営者が会社売却益を獲得し、個人の資産形成や老後資金に充てられることが指摘されています。
また、経営者保証や個人担保について、事業承継を契機に見直しを進める支援策も整備されつつあります。
こうした仕組みにより、長年の経営努力を個人の安心につなげやすくなっているのです。
加えて、買い手企業との間で生まれるシナジーも、事業承継M&Aの重要なメリットです。
中小企業白書などでは、M&Aを通じて販路拡大や新事業展開を図る「成長型M&A」が紹介されており、設備投資や人材投資の余力を高める効果が示されています。
自社単独では難しかった設備更新や業務の高度化も、グループ全体の資金力とノウハウを活用することで実現しやすくなります。
このように、承継後の成長戦略まで見据えられる点が、経営者にとって大きな魅力となっています。
| メリットの種類 | 具体的な内容 | 経営者にもたらす効果 |
|---|---|---|
| 事業の存続・雇用維持 | 従業員雇用と取引関係の継続 | 地域や取引先への責任の履行 |
| 創業者利益と資産形成 | 株式・事業譲渡対価の獲得 | 老後資金や次の挑戦の原資 |
| シナジーと成長戦略 | 販路拡大と投資余力の向上 | 承継後の事業成長の加速 |
事業承継M&Aのデメリットとリスクを具体的に把握
事業承継M&Aでは、自社の希望条件どおりに相手先や条件が見つからない可能性があることを、まず理解しておく必要があります。
特に中小企業の場合、自社の強みや経営状況を丁寧に整理しないまま進めると、価値が正しく評価されず、譲渡価格が期待より低くなるおそれがあります。
また、相手先の探索や条件交渉には相応の期間が必要とされ、複数の候補先との面談や検討を重ねるため、経営者の時間的負担も増大しやすいとされています。
さらに、専門家への報酬や必要な資料整備など、プロセス全体における手間と費用も見込んでおかなければなりません。
次に、経営方針や企業文化の変化が、従業員やその他の関係者に与える影響にも注意が必要です。
中小企業では、経営者と従業員との距離が近く、「経営者が変わると会社も大きく変わる」と受け止められやすいことが指摘されています。
そのため、買い手企業の経営スタイルや人事制度が大きく異なると、社内に不安が広がり、キーパーソンの離職や士気低下につながるおそれがあります。
さらに、取引先や金融機関などのステークホルダーに対しても、早い段階から丁寧な説明を行わなければ、取引条件の見直しや信用不安につながるリスクがあることを押さえておくべきです。
また、事業承継M&Aでは、デューデリジェンスを通じて財務や法務の問題点が明らかになり、条件変更や交渉の難航につながる場合があります。
中小企業では、決算書の内容と実態が乖離していたり、簿外債務や許認可、税務上の論点などが後から判明する例もあり、売り手側は事前に自社のリスクを洗い出しておくことが重要とされています。
さらに、契約書の条項によっては、表明保証違反や競業避止義務の範囲を巡り、成約後に紛争へ発展する可能性も否定できません。
このため、経営者自身が内容をよく理解し、必要に応じて専門家の助言を受けながら、将来のトラブルを未然に防ぐ姿勢が欠かせないといえます。
| 項目 | 主な内容 | 経営者が確認したい点 |
|---|---|---|
| 条件面のリスク | 価格や条件の不一致 | 譲渡価格と優先条件の整理 |
| 人・取引先のリスク | 人材流出や信用不安 | 従業員説明と取引先対応方針 |
| 財務・法務リスク | 簿外債務や契約紛争 | 事前のリスク洗い出し |
不動産会社オーナーがM&Aを進めるうえで押さえたい実務ポイント
不動産会社の事業承継M&Aを検討する際には、まず自社の資産と負債の全体像を整理することが重要です。
とくに賃貸用不動産や遊休不動産、自社ビルなどは、収益性や含み益の有無を踏まえて評価する必要があります。
同時に、借入金や保証状況、敷金預り金などの負債も正確に洗い出しておくと、買い手との条件交渉が進めやすくなります。
日常の月次試算表に加えて、決算書や固定資産台帳を基に整理しておくことで、専門家への相談も円滑になります。
次に、どのような形で事業を引き継ぎたいかというゴールイメージを明確にすることが欠かせません。
たとえば、売却価格をどの程度重視するのか、従業員の雇用や既存拠点の維持を優先したいのか、売却後も一定期間は経営に関与したいのか、といった点です。
このような希望条件を家族とも共有しておくと、交渉の途中で方針が揺らぎにくくなります。
また、譲渡後のライフプランや資金需要も踏まえて整理することで、無理のない条件設定がしやすくなります。
さらに、事業承継M&Aは成約までに一定の時間を要するため、全体のスケジュール感を早めに持つことが大切です。
一般的には、準備から相手先探索、基本合意、デューデリジェンス、最終契約・クロージングまで、少なくとも数か月から1年以上かかる場合もあります。
そのため、経営者の引退時期や主要テナントの契約更新時期、金融機関との借換えのタイミングなどを見据えて逆算することが有効です。
あわせて、相談先を選ぶ際には、不動産取引や事業承継に関する実績、報酬体系、守秘義務への配慮などを比較検討すると安心です。
| 準備段階で整理する事項 | ゴール設定の着眼点 | 相談先選びの確認項目 |
|---|---|---|
| 保有不動産の収益性と評価 | 売却価格と手取り資金の水準 | 不動産M&A支援の実績 |
| 借入金・保証・敷金預り金 | 従業員の雇用と待遇維持 | 報酬体系と費用の透明性 |
| 主要取引先・管理物件の状況 | 経営者の関与期間と役割 | 守秘義務と情報管理体制 |
まとめ
事業承継M&Aは、後継者問題の解決や雇用維持、創業者利益の確保など多くのメリットがある一方で、条件交渉や社内調整、法務・税務面のリスクも伴います。
だからこそ、早めに自社の資産・負債・不動産の状況を整理し、希望するゴールを明確にすることが重要です。
当社では、不動産会社オーナー様の状況を丁寧にヒアリングし、事業承継M&Aの進め方やリスク対策まで分かりやすくサポートいたします。
自社の今後に少しでも不安やお悩みがある方は、まずはお気軽にご相談ください。
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