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収益物件は法人化と個人どっちが得?経営者が押さえる判断基準を解説

収益物件/投資

小林 裕樹

筆者 小林 裕樹

不動産キャリア13年

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収益物件を既にお持ちの経営者の方や、これから本格的に賃貸経営に取り組みたいとお考えの方から、法人化すべきか個人で続けるべきかというご相談が増えています。
税金だけを見ると法人の方が有利に見える一方で、社会保険や設立・維持コストまで含めて考えると、必ずしも法人一択とは限りません。
また、銀行融資の受けやすさや、将来の相続・事業承継、万一のリスク管理まで視野に入れると、どっちが得かの判断は一段と複雑になります。
本記事では、収益物件を法人と個人のどちらで保有・運用するかについて、税金・融資・リスク・承継といった論点をわかりやすく整理し、経営者が押さえておきたい判断基準を具体的に解説します。
ご自身の状況に近いケースをイメージしながら読み進めていただくことで、法人化のタイミングや検討すべきポイントがクリアになるはずです。


収益物件は法人と個人どっちが得か全体像

収益物件とは、賃料収入などの不動産所得を得ることを目的として保有する不動産のことです。
この収益物件を誰の名義で持つかによって、税金の計算方法や損益の扱いが大きく変わります。
一般的には、経営者個人が不動産を所有して賃貸経営を行う「個人名義」と、会社を設立して会社名義で保有する「法人名義」のどちらかを選ぶことになります。
まずは、それぞれの名義がどのような位置づけにあるのかを整理しておくことが重要です。

収益物件を個人名義で保有する場合、不動産所得は個人の所得として合算され、所得税や住民税の累進課税の対象となります。
一方で、法人名義で保有すれば、不動産から得られる利益は法人の所得となり、法人税等の税率構造に従って課税されます。
また、金融機関からの融資を受ける際も、個人名義では個人の年収や他の借入状況、法人名義では決算内容や事業計画など、評価されるポイントが異なります。
このように、同じ収益物件であっても、名義の違いによって資金繰りや税負担の姿が変わると理解しておく必要があります。

さらに、法人名義か個人名義かの選択は、税金や融資だけでなく、万一の賠償責任や借入金の返済責任といったリスク面にも影響します。
加えて、経営者が将来、家族や後継者へ資産をどのように承継するかという視点でも、法人と個人では取り得る選択肢が変わります。
そのため、どちらが得かを判断するには、目先の税負担だけでなく、リスク管理や資産承継、事業の拡大余地など、複数の要素を総合的に比べることが欠かせません。
結果として、自社の経営状況や今後の事業計画に沿った形で、最適な名義を選ぶことが重要になります。



比較項目 個人名義の位置づけ 法人名義の位置づけ
税金の考え方 所得税と住民税の累進課税 法人税等の一定税率
融資の評価軸 個人年収と資産背景 決算内容と事業計画
リスクと承継 個人財産と一体管理 法人財産として分離管理

法人化と個人運用で変わる税金・社会保険の比較

まず、個人で収益物件を保有する場合は、家賃収入から必要経費を差し引いた不動産所得に対して所得税と住民税が課されます。
所得税は累進課税で、課税される所得金額が増えるほど税率が上がる仕組みです。
一方、法人で収益物件を保有する場合は、法人の所得に対して法人税や地方法人税、法人住民税、事業税などがかかり、一定水準までは概ね一定の税率帯で推移します。
そのため、事業全体としての課税所得が高くなるほど、個人の高い累進税率と比較して、法人課税の方が有利になる局面が生じやすくなります。

次に、同じ収益金額であっても、個人と法人では使える経費や利益の配分方法が異なる点が重要です。
個人の場合は減価償却費や必要経費を差し引いた後の不動産所得がそのまま課税対象となり、赤字が出たとしても他の所得との損益通算に制限がある場合があります。
法人の場合は、建物や設備の減価償却に加え、役員報酬や役員社宅費、一定の範囲での福利厚生費など、事業として認められる支出の幅が広くなります。
また、利益の一部を役員報酬として分配することで、法人所得と個人所得に分けて税負担を調整することも可能になります。

ただし、法人化によって社会保険の負担や設立・維持にかかる固定的なコストが発生する点を見落としてはいけません。
法人で役員報酬を支給する場合、原則として健康保険と厚生年金保険などの社会保険への加入が必要となり、会社負担分と個人負担分の両方を合計すると、手取り額に対する負担は小さくありません。
さらに、法人住民税の均等割や、決算申告にかかる専門家報酬など、利益の有無にかかわらず発生する費用も考慮する必要があります。
したがって、経営者としては、税率だけでなく社会保険料や維持費を含めた「実質手取り」を比較し、個人と法人のどちらが自社の収益水準に適しているかを慎重に検討することが大切です。


比較項目 個人名義の場合 法人名義の場合
税率構造 所得税累進課税 法人税等ほぼ一定
節税手段 減価償却と必要経費 減価償却と役員報酬
社会保険負担 国民健康保険等 健康保険と厚生年金
維持コスト 申告手続き中心 決算申告と均等割

銀行融資・リスク管理から見る法人か個人かの選択

銀行融資では、個人名義の場合は個人の年収や勤続年数、既存の借入状況など、個人信用情報が重視されます。
一方で法人名義の融資では、決算書に示される売上や利益水準、自己資本比率、返済原資となる賃料収入の安定性など、事業としての収益力が評価されます。
また、同じ物件であっても、個人か法人かにより返済期間や金利条件が異なる場合があり、結果として調達できる金額にも差が生じます。
したがって、今後の物件購入計画や既存事業との一体的な資金計画を踏まえて、どちらで融資を受けるかを検討することが重要です。

賃貸経営では、入居者や近隣住民とのトラブル、建物設備の事故、原状回復を巡る紛争など、さまざまな債務・賠償リスクが発生する可能性があります。
個人名義で全てを引き受ける場合、賃貸経営に関する債務が、他の個人資産や家計と直結しやすい点に注意が必要です。
これに対して、法人を活用すると、契約主体や損害賠償義務の帰属を原則として法人に集中させることができ、経営者個人の資産と事業リスクをある程度分けて管理しやすくなります。
もっとも、実務では代表者保証や連帯保証を求められる場面も多いため、契約条件や保証の範囲を丁寧に確認したうえで、法人格によるリスク分散を設計することが求められます。

収益物件を複数保有し、事業として拡大していく場合には、管理体制やガバナンスの観点からも、法人か個人かで大きな違いが生じます。
個人名義では、契約や支払いの多くが本人に集中し、業務の属人化が進みやすく、万一の病気や不在時に事務処理が滞るおそれがあります。
一方で法人であれば、役員や従業員への権限移譲や、社内規程にもとづく意思決定フローの整備など、組織としての管理体制を構築しやすくなります。
将来の事業規模や、誰がどのように賃貸経営を運営し続けるかを見据えたうえで、法人を用いたガバナンス体制の構築を検討することが、長期的な安定経営につながります。

比較項目 個人名義の特徴 法人名義の特徴
融資審査の基準 個人年収・信用重視 決算内容・事業性重視
リスクの集中度合い 家計と事業が一体 法人にリスク集約
管理体制・ガバナンス 経営者本人に業務集中 組織的な権限分散

経営者が収益物件を法人化すべきタイミングと注意点

まず、法人化のタイミングを考える際には、現在の不動産所得と他事業の所得を合算した課税所得水準を把握することが重要です。
国税庁が公表する令和6年分の所得税速算表では、課税所得が増えるほど所得税と復興特別所得税の負担率が段階的に高くなります。
一方で、法人に適用される法人税・地方法人税・法人住民税・事業税を合わせた実効税率は、一定の所得水準までは個人より低くなる場合があります。
このため、経営者としては、将来の家賃収入の見込みも含めて、どの所得水準から法人化が検討に値するかを税理士等と事前に試算しておくことが大切です。

次に、個人名義の収益物件を法人へ移転する際には、売却とみなされることで譲渡所得税が発生し得る点に注意が必要です。
個人から法人への売買や現物出資を行う場合、税務上は時価で取引したものとして取り扱われることが一般的であり、購入時より時価が高ければ、その差額に対して所得税・住民税が課税されます。
さらに、不動産取得税や登録免許税、司法書士や専門家への報酬、金融機関との契約変更に伴う手数料など、諸費用も無視できません。
したがって、物件の含み益と移転コストを総合的に比較し、短期的な税負担と長期的な節税メリットの損益分岐を慎重に検討することが求められます。

また、相続や事業承継の観点から法人化を検討する場合には、中長期の資産戦略としての位置づけを明確にしておくことが重要です。
個人名義のままでは、不動産ごとに相続人間での共有が生じやすく、将来の売却や建替えの意思決定が複雑になるおそれがあります。
これに対して、法人名義であれば、不動産そのものではなく株式を承継する形をとることで、議決権や配当の配分を通じた柔軟な設計がしやすくなります。
あわせて、役員報酬や配当を活用して家族に所得を分散させる方法も考えられるため、相続税や所得税の負担を含めた総合的な資産承継プランの中で法人化の是非を判断することが大切です。

検討の観点 個人名義の特徴 法人名義の特徴
税負担と手取り 累進課税で高所得ほど負担増 一定水準まで実効税率安定
移転時のコスト 名義変更不要で追加負担小 譲渡所得税や各種登録費用
相続と承継方法 物件の共有化で調整が複雑 株式承継で権利配分が柔軟

まとめ

収益物件を法人と個人どっちで持つべきかは、税金だけでなく融資、リスク、承継まで含めた総合判断が重要です。
特に、課税所得が一定水準を超える経営者の方や、複数物件保有・事業拡大を見据える場合は、法人化のメリットが大きくなります。
一方で、社会保険料や設立・維持コストも無視できません。
当社では、現状の所得や将来の事業計画を踏まえたシミュレーションを行い、最適な名義選択や法人化のタイミングをご提案します。
具体的な数字を確認しながら検討したい方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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